酒井麻生代さんに聞く|フルートとジャズ - 語り尽くせないその魅力
フルートに出会ったのは小学生の頃。音色が優しく美しく、自分の声で歌うような豊かな表現力に魅了されました。学生時代はクラシック一辺倒でしたが、ビル・エヴァンスやキース・ジャレット、チック・コリアのピアノがジャズの入口に。かっこいいなあと思いながらよく聞きました。ジャズはその場でつくる瞬間の音楽で、二度と同じ演奏はできない。自分を一番自由に表現できる音楽だと思います。ただ、当初はジャズフルートはなかなか好きになれず、ピアノばかり。一転したのは、ヒューバート・ロウズのフルートを聞いてからです。サウンドはジャズだけど、音色や細部のニュアンスも美しく、リズムもかっこいい。こんなジャズフルートがあるのかと驚いたことが今につながっています。
実はフルートは、どんなジャンルの音楽にもなじむ音色。ジャズとの相性も良く、包み込むように溶け込んでいく。オリジナル楽曲にフルートを多く取り入れたチック・コリアの代表作『スペイン』をはじめ、フルートが入ることでより洗練される曲もたくさんあります。フルート=クラシックというイメージはまだまだ強いですが、私はジャンルやカテゴライズをあまり意識していません。フルートはあらゆる音楽に生きる楽器。美しくきらびやかな音色はもちろん、太く落ち着いた音で深い情感を表現することもできる。ジャンルごとに吹き方は変えますが、そこにとらわれすぎずに演奏しています。クラシックをジャズにアレンジして演奏する機会も多いですが、アレンジすることで曲や作曲者の魅力をさらに引き出したいと思っています。今回演奏する『白鳥の湖』は、マッコイ・ターナーのピアノのイメージでアレンジしました。カルテットのみなさんと楽しくスリリングな演奏にしたいです。
ジャズフルートのオススメは?と聞かれますと、ヒューバート・ロウズのほか、ジェレミー・スタイグやジョー・ファレル、ハービー・マン、サム・モスト、エリック・ドルフィーの演奏。きっとフルートという楽器の幅の広さや魅力に気づいてもらえるはず! ときに優しく、ときに力強くアグレッシブに。生命の息吹を表現できるフルートと、自分を自由に表現し創造できるジャズを通して、内なる想いや世界への願いを伝えられることに日々喜びを感じています。
(インタビュー:2023年10月31日)
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